勇気と冷静さ　意識が世界を変えるとき

変えられるものを変える勇気を

変えられないものを受け入れる冷静さを

そして両者を識別する知恵を与えたまえ

　

これは、神学者ラインホルド・ニーバーの祈りの一節です。

シンプルでありながら、深い叡智を湛えたこの言葉は、ただ読んで理解しようとするだけでも、私たちの内側に静かな灯をともします。

人は、ときに人生の中で立ち止まり、迷い、思うように進めない現実に、原因を求めます。

「自分がこうなったのは、あの人のせいだ」

「あの出来事がなければ、きっと……」

そんなふうに、私たちは知らず知らずのうちに、自分の人生の舵を外側に委ねてしまうことがあります。

けれど、ほんとうに必要なのは、世界を変えようとすることではなく、“自分の意識”という、見えない領域に静かに光を当てることなのです。

意識は、世界を映す鏡。

私たちの周波数、波動、心のチューニングによって、現実の風景はまったく違った姿を見せてくれます。

自分の意識を変えることによって、体験する現実は変わる。

その変化は、外側の出来事を強引に動かすことではなく、内側の静かな変容が、自然と周囲の現象に響き合っていくということ。

努力や向上心といった「がんばり」の話ではありません。

むしろ、力を抜いた深い気づき──

「いま、私は何に対して反応しているのか」

「それは本当に、自分の外にある原因なのか」

そんな問いかけから始まる、静かな目覚めのことです。

変えられるものと、変えられないもの。

その境目を見きわめる知恵は、一朝一夕に得られるものではないかもしれません。

でも、日々、自分の内側を見つめることで、私たちは少しずつ、心の中に澄んだ湖を育てていきます。

そこには、勇気も、冷静さも、そして知恵も、すでにすべてが宿っているのかもしれません。

だからこそ、ニーバーの祈りは、「与えたまえ」と空に願うと同時に、「思い出させてください」と、自らに語りかける言葉なのです。

世界が変わるのではなく、私たちの意識が世界を変えてゆく。

その確かな真理を胸に、今日もまた、静かに、人生の歩みを整えていきましょう。