【書籍】言葉との邂逅
『言葉との邂逅』は、田坂広志さんの著書です。
田坂広志さんは、技術者、経営学者(社会起業家論)です。
1951年生まれ。
東京大学を卒業後、大学院へ進学し工学博士(原子力工学)を取得。
多摩大学大学院名誉教授、シンクタンク・ソフィアバンク代表、21世紀アカデメイア学長、田坂塾塾長など多方面において活動しています。
思想と哲学、仕事と人生、企業と経営、社会と市場など、多岐にわたる分野、幅広いテーマで60冊余の著作を著してきた田坂広志の随筆的書評が、一冊の本になりました。
『言葉との邂逅』というテーマで上梓されたこの随筆的書評は、著者が、これまでの人生において読書を通じて巡り会った、心に残る言葉を、それぞれ、一冊の本、一つの言葉を取り上げ、語っています。
【目次】
「何も知らない子供たち。
彼らはあれでいい。みじめなのは俺たちだ。」
―――『きけ わだつみのこえ』 日本戦没学生記念会
「進化とは、つねに知的であり続ける宇宙が、
本来的に持つ『遊び心』に他ならない。」
―――『自己組織化する宇宙』 エリッヒ・ヤンツ
「我々の心は、本来、境界の無い世界に、
自ら境界を作り出し、葛藤と苦しみを生み出している。」
―――『無境界』 ケン・ウィルバー
「若い時には、若い心で生きて行くより無いのだ。
純な青年時代を過ごさない人は、深い老年期を持つ事も出来ないのだ。」
―――『出家とその弟子』 倉田百三
「あなたは、多くの知識を持ってはいるが、心は貧しい。
そして心が貧しいほど、知識への欲求は大きくなる。」
―――『クリシュナムルティの日記』 J・クリシュナムルティ
「地球幼年期の終わり -Childhood’s End-」
―――『地球幼年期の終わり』 アーサー・C・クラーク
「小石までが輝いて見えるのです」
―――『飛鳥へ、そしてまだ見ぬ子へ』 井村和清
「無数の人々とすれ違いながら、私たちは出会うことがない」
―――『旅をする木』 星野道夫
「我々は、いま、ターニング・ポイントにさしかかっている」
―――『ターニング・ポイント』 フリッチョフ・カプラ
「自ら恃むところ頗る厚く、賎吏に甘んずるを潔しとしなかった」
―――『李陵・山月記』 中島敦
「今後百年の間に、地球上での成長は限界に達するであろう。」
―――『成長の限界』 ドネラ・メドウズ デニス・メドウズ
「永遠の一瞬」
―――『一木一草』 前田真三
「鋼鉄はいかに鍛えられたか」
―――『鋼鉄はいかに鍛えられたか』 オストロフスキー
「もし、万一、再び絵筆をとれる時が来たなら」
―――『風景との対話』 東山魁夷
「万物と自己とは、根源的には一つ」
―――『心理療法序説』 河合隼雄
「無明と業は、知性に無条件に屈服するところから起こる」
―――『禅と日本文化』 鈴木大拙
『言葉との邂逅』田坂広志 著 未来からの風ー田坂広志公式サイトー
「なぜ、読書をするのか」との問いに対して、田坂広志さんはこの本の冒頭で「言葉との邂逅(かいこう)」を求めて、と答えると言っています。
著者が、魂により紡いだ「言葉」との出合いを求めて、田坂さんは読書をしているそうです。
この本『言葉との邂逅』は、田坂さんの書評集であり、田坂さんがマネジメントの道を歩むうえで、どのような思想をお持ちであるかみえてきます。
全部で16冊の本について書かれていますが、なかでも、私が最も共感したのは
「万物と自己とは、根源的には一つ」
ーーー『心理療法序説』 河合隼雄
という章(書評文)です。
この書評文では、マネジメントにおいて、部下と向き合う際の考え方と本質について短くまとめてあります。
その「本質」を理解しているか、理解していないかで、マネジメントを行なうプロセスにおいても、結果においても、雲泥の差をもたらすであろうと思います。
「自分の心に秩序を得たとき、世界も秩序を回復する。」
田坂さんも仰られているのですが、たしかに、この真実に気づく人はあまりいらっしゃらないかもしれません。
私自身、はじめは気づかずに、忙しく動き回り、頑張って部下の指導をしていたときがありました。
必死にもがけばもがくほど、水の中に沈んでゆく・・・。
そのような体験を繰り返したことがあります。
水の中で力を抜くと身体が浮かぶことを多くの人がご存知のように、現実世界の「マネジメント」においても、その原理が同様であることを理解していると、コツを掴めばとても楽になります。
『言葉との邂逅』は、マネジメントの道を歩む方はもちろんですが、真剣に人生や物事と対峙されている方に、多くの気づきをもたらしてくれます。
参考