
ジョージア・ガイドストーンを作った人物は、何を考えていたのか|『Common Sense Renewed』から読む人類の未来像
ジョージア・ガイドストーンに刻まれていた10の指針には、一見すると異なる種類の提言が並んでいます。人類を5億人以下に保ち、自然との永続的な均衡を維持すること。生殖を賢明に導き、適性と多様性を改善すること。人類を新しい言語によって結ぶこと。情熱や信仰、伝統を理性によって統御すること。公正な法律と裁判所によって人々と国家を守り、国家間の争いを世界裁判所によって解決すること。そして、真実、美、愛を尊び、「無限なるもの」との調和を求め、地球の癌にならず、自然のための場所を残すことです。
人口や生殖についての部分だけを見れば、人口問題を扱った石碑だったようにも見えます。世界裁判所や法律についての部分を見れば、国際政治や世界秩序についての提言だったようにも見えます。しかし、その同じ石碑には「真実、美、愛」や「無限なるものとの調和」という言葉まで刻まれていました。人口、生殖、言語、政治、法律、自然、そして無限なるもの。なぜ、これほど異なるものが一つの石碑に並んでいたのでしょうか。
前の記事では、この10の指針がどこから来たのかを追いました。ゲリー・ボーネル氏が語っていた話から出発し、実際のジョージア・ガイドストーンがどのように建てられたのかを調べ、その過程で「R.C. Christian」を名乗った人物へと辿り着きました。そして、その調査をさらに進めた先で見つかったのが、1986年にRobert Christian(ロバート・クリスチャン)の名前で出版された『Common Sense Renewed(コモン・センス・リニュード)』という一冊の本でした。
この本の中でクリスチャンは、自分自身について、ジョージア・ガイドストーンの発案者であり、そこに刻まれた碑文の唯一の著者であると書いています。石碑の建立には複数の米国市民の協力があったとしながらも、碑文を書いたのは自分自身だと明言しています。また、自分たちには謎めいた目的も隠された動機もないと述べ、匿名を選んだ理由についても、人物をめぐる論争によって指針そのものへの注意が逸れることを避けるためだったと説明しています。
もちろん、これはクリスチャン本人が著書の中で語っていることです。その説明だけによって、匿名の人物の素性や、彼に協力した人々の実態まで確認できるわけではありません。しかし、少なくともここには、ジョージア・ガイドストーンを考案したと名乗る人物自身が、その数年後に一冊の本を残していたという重要な手がかりがあります。
しかも、『Common Sense Renewed』は石碑の制作経緯だけを説明した本ではありません。そこでは、人類の未来、人口、生殖、教育、政治、経済、戦争、世界秩序、宗教、神、科学、自然といった広い問題について、クリスチャン自身の考えが書かれています。読み進めるほど、ジョージア・ガイドストーンの10の指針は、それぞれ独立した標語ではなく、この人物が考えていた人類の未来像を短い言葉へ圧縮したものだったのではないかと思えてきます。
それならば、石碑だけを眺めながら、その背後に何があったのかを推測する前に、まず本人が残した文章を読んでみる必要があります。ロバート・クリスチャンは、人類をどのような存在として見ていたのでしょうか。そして、あの10の指針によって、何を未来へ残そうとしていたのでしょうか。
ここからは、後世に語られてきた解釈や陰謀論からではなく、クリスチャン本人が残した『Common Sense Renewed』を辿りながら、その人類像を見ていきます。
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クリスチャンが最初に恐れていたもの
ここから先では、Robert Christian(ロバート・クリスチャン)の著書『Common Sense Renewed(コモン・センス・リニュード)』を辿りながら、ジョージア・ガイドストーンの背後にあった思想を読み解いていきます。クリスチャンは、人類の何を危惧し、どのような未来を構想していたのでしょうか。人口と生殖、政治、経済、教育、宗教、そして自然との関係について、彼が提示した具体的な提案を確かめ、それぞれがどのようにつながっているのかを見ていきます。そのうえで、人類の未来をよりよい方向へ導こうとするとき、何を「望ましい」と判断し、その未来を誰が決めるのかという問いについて考えていきます。