
ウェルネス(WELLNESS)の本質とは?ヘルスとの違いから、自分らしく輝く生き方のデザインまで
現代社会において、インターネットの普及や働き方の多様化により、私たちはかつてないほど「自由な生き方」を選択できるようになりました。
それに伴い、単に「病気ではない」という状態を超えて、一人ひとりが自分らしく、より良く生きるための指標として「WELLNESS(ウェルネス)」という言葉が注目を集めています。
しかし、言葉だけはよく耳にするものの、その具体的な意味や、従来の「健康(HEALTH)」と何が違うのかを明確に説明できる人は意外と少ないかもしれません。
この記事では、ウェルネスの誕生から現代的な定義、そして「Awaken Human Nature(人間の本質を呼び覚ます)」という視点から、私たちが今日から実践できる「ウェルネスな生き方」について詳しく解説していきます。
WELLNESS(ウェルネス)の起源と定義

ウェルネスという概念は、1961年にハルバート・ダン博士が著書を出版したことで世界に広まりましたが、その源流を辿ると、より詳細な事実が見えてきます。
ハルバート・ダン博士による提唱
ウェルネスは、アメリカの公衆衛生医であり統計学者でもあったハルバート・ダン博士(Dr. Halbert L. Dunn)によって提唱されました。
一般的には「1961年」と言われることが多いですが、厳密には博士が1950年代に行った全29回の講演録がベースとなっており、1950年代後半にはすでにその思想の核心が語られていました。
彼は、それまでの医学が「死」や「病気」をゼロ地点として捉えていたのに対し、その反対側にある「輝くような健康状態」へ向かう動的なプロセスを「ハイレベル・ウェルネス(High-Level Wellness)」と名付けたのです。
「個人がその時々の環境の中で、自身の持つ可能性を最大限に維持し、また、そのバランスを整えようとする、統合された機能の状態(活動)である。」 (※1961年の著書『High-Level Wellness』に基づき、日本のウェルネス研究機関等で一般的に紹介されている定義。原文:”An integrated method of functioning which is oriented toward maximizing the potential of which the individual is capable, within the environment where he is functioning.”)
ハルバート・ダンによる定義(趣旨)
東京成徳大学の資料によれば、ダン博士は医師としての顔だけでなく、統計学者として「人間の生」をデータと哲学の両面から見つめていました。
この「科学的視点」と「人間的視点」の融合こそが、ウェルネスの出発点でした。
当時、医学界の主流は「病気を治すこと」に主眼を置いていましたが、ダン博士は「人間がいかにして最高の状態(ハイレベル)で機能できるか」という、より高次な健康観を提示したのです。
世界保健機関(WHO)とウェルネス
この考え方は、世界保健機関(WHO)が提示する健康の定義とも深く共鳴しています。
WHOは健康を以下のように定義しています。
「健康とは、病気ではないとか、弱っていないということではなく、肉体的にも、精神的にも、それから社会的にも、すべてが満たされた状態にあること(憲章前文より)」
世界保健機関
ウェルネスは、このWHOの定義をさらに一歩進め、「より良い状態を目指して自ら行動する過程」という、個人の主体性を重視した概念として発展してきました。
近代におけるウェルネスの再定義
21世紀に入り、ストレス社会や環境問題、そして価値観の多様化が進む中で、ウェルネスの定義はより多層的で深みのあるものへと進化しています。
グローバル・ウェルネス・インスティチュート(GWI)の定義
世界的な研究機関であるGWI(Global Wellness Institute)は、ウェルネスを次のように定義しました。
「ウェルネスとは、全体的な健康状態(ホリスティック・ヘルス)につながる活動、選択、およびライフスタイルを積極的に追求することである。」
Global Wellness Institute
日本における第一人者、荒川雅志教授による定義
日本におけるウェルネス研究の第一人者である琉球大学の荒川雅志教授は、現代日本に即した、より希望に満ちた定義を提唱しています。
「身体の健康、精神の健康、環境の健康、社会的健康を基盤にして、豊かな人生をデザインしていく、自己実現」
荒川雅志
荒川教授は、健康をあくまで「基盤(土台)」と位置づけ、その上でいかに「人生をデザインし、自己実現していくか」という「生き方(ライフスタイル)」そのものをウェルネスと呼んでいます。
これは、私たちが「何のために健康でいたいのか?」という根源的な問いに対する答えでもあります。
WELLNESS(ウェルネス)とHEALTH(ヘルス)の決定的な違い

「ウェルネス」と「ヘルス(健康)」は混同されがちですが、その視点と目的には明確な違いがあります。
ヘルス(HEALTH)は「状態」
ヘルスは、英語の「Heal(治癒する)」を語源に持ち、一般的には「病気や怪我がない状態」を指します。
- 視点: 欠如の否定(病気ではない、異常がない)
- 基準: 数値や診断結果(血圧、体重、検査値など)
- 特徴: 受動的な側面が強く、マイナスをゼロに戻すニュアンスが含まれます
ウェルネス(WELLNESS)は「プロセス」
ウェルネスは、「元気」や「爽快」を意味する「Well」を語源に持ち、「より良く生きようとするプロセス」を指します。
- 視点: 可能性の拡大(どうすればもっと輝けるか)
- 基準: 主観的な充実感(生きがい、楽しさ、自己実現)
- 特徴: 能動的であり、ゼロからプラスへ、さらに高い次元へと積み上げていく活動です
| 項目 | HEALTH(ヘルス) | WELLNESS(ウェルネス) |
| 主な意味 | 健康、病気がない状態 | 輝くように活き活きとした生き方 |
| 状態の性質 | 静的(ある瞬間の状態) | 動的(継続的なプロセス) |
| 目標 | 病気の予防・維持 | 自己実現・人生の充実 |
| 焦点 | 体や数値 | 心・体・社会・環境すべて |
つまり、「健康(ヘルス)は、ウェルネスという豊かな人生を歩むための土台」であると言い換えることができます。
人間の本質を呼び覚ます「ウェルネスの7つの次元」

ウェルネスを単なる概念で終わらせないためには、それを構成する要素を具体的に把握することが有効です。
これら7つの要素が互いに影響し合い、重なり合うことで、一つの「豊かな人生」が形作られます。
- 身体的ウェルネス(Physical): 適切な運動、栄養、休息を通じて身体機能を最適に保つこと。
- 精神的ウェルネス(Emotional): 自分の感情を理解し、ストレスに対処し、前向きな自尊心を持つこと。
- 知的ウェルネス(Intellectual): 好奇心を持ち続け、新しい知識やスキルを学び、創造的に考えること。
- 社会的ウェルネス(Social): 他者と良好な関係を築き、コミュニティに貢献し、支え合うこと。
- 環境的ウェルネス(Environmental): 自分を取り巻く自然や住環境を尊重し、調和して生きること。
- 職業的ウェルネス(Occupational): 仕事を通じて自己表現し、満足感を得ながら社会的な役割を果たすこと。
- スピリチュアル・ウェルネス(Spiritual): 人生の目的や意味を見出し、自身の価値観に基づいた信念を持つこと。
各次元のより詳しい内容については、以下の記事をご覧ください。
~関連記事~
マズローの欲求階層説から紐解く「ウェルネス」への深化
ウェルネスがなぜ現代においてこれほど求められているのか。
その理由は、心理学者アブラハム・マズローが提唱した「欲求階層説」を用いると非常に明快になります。
「欠乏欲求」としてのヘルス
マズローは、生理的欲求や安全欲求など、不足を埋めるための動機を「欠乏欲求」と呼びました。
従来の「ヘルス(健康)」は、この段階に深く関わります。
「病気を治したい」「不調を解消したい」という動機は、生存の安全を確保するための、いわばマイナスをゼロにするための欲求です。
「成長欲求」としてのウェルネス
一方で、階層の頂点にある「自己実現欲求(Self-actualization)」は、自分が本来持っている可能性を最大限に発揮したいという「成長欲求」です。
「ウェルネス」は、まさにこの自己実現の段階、あるいはさらにその上の「自己超越」を目指す生き方です。
マズローは、欠乏欲求が満たされた後に現れるこの高次の欲求こそが、人間をより善い存在へと突き動かすと考えました。
物質的に満たされた現代において、私たちが求めているのは単なる生存(ヘルス)ではなく、「自分は何者として、どう生きるか(ウェルネス)」という人間の本質、在り方に根ざした問いなのです。
ウェルネスを追求することは、マズローの言う「自己実現」を目指すプロセスそのものであり、眠っている人間の本質を呼び覚ます旅に他なりません。
ウェルネスの核心 野崎康明氏が説く「自己責任と変革」

ウェルネスをより身近に、かつ本質的に理解するために、日本ウエルネス学会の元理事長である野崎康明氏の定義は非常に示唆に富んでいます。
ウエルネスとは、
野崎康明
- 自分の人生には自分で責任を持つことを知り、
- より幸福でより充実した人生を送るために、
- 自分の現在の生活習慣(ライフスタイル)を点検し、
- 自分で変えなければならないことに気づき、
- これを変革し続けていく過程である
この定義には、私たちがウェルネスを実践する上での「核心」が表されています。
① 「自律」の精神
「自分の人生の責任者は自分である」という自覚です。
誰かに言われておこなう健康法ではなく、自分がどうありたいかを自分で決めることが、ウェルネスの出発点です。
② 「気づき」のプロセス
今の自分の生活(食事、睡眠、仕事の向き合い方、人付き合い、精神状態など)を客観的に見つめ直し、「あ、ここはもっと心地よくできるな」という小さな気づきを大切にすることです。
③ 「変革」の継続
一度にすべてを変える必要はありません。
気づいたことを少しずつ、日常の中でアップデートし続けていく。
その「変化の過程」そのものがウェルネスなのです。
ウェルネスを実践するための「無理のないステップ」
ウェルネスという言葉を「ハイレベル」で「高度なもの」と捉えすぎると、かえってハードルが高く感じられてしまうかもしれません。
しかし、ウェルネスの本質は「楽しさ」と「充実」にあります。
過度な頑張りは手放す
「健康のために毎朝5時に起きて10km走らなければならない」と思い詰め、それが苦痛になっているのであれば、それはウェルネスとは呼べません。
ウェルネスにおいて大切なのは、「楽しみながら色々と考えてやってみよう!」という前向きな好奇心です。
- 心地よさを基準にする: やっていることに苦痛を感じ始めたら、一度立ち止まって方法を変えてみましょう。
- 没頭できる時間を持つ: 何かに夢中になっている時、人は精神的に非常に高いウェルネス状態にあります。趣味でも仕事でも、自分が「活き活きとしている」と感じる瞬間を増やすことが大切です。
- 「いま」を味わう: 未来の健康のために今を犠牲にするのではなく、いまの食事が美味しい、いま風が気持ちいい、といった感覚を大切にすることから始まります。
一人ひとりのウェルネスが世界を変える

ウェルネスは個人的な活動に留まりません。
実は、個人のウェルネスの追求は、社会全体をより良くしていく力を持っています。
社会的健康とSDGs
琉球大学の荒川教授が提唱するように、ウェルネスには「環境の健康」や「社会的健康」が含まれます。
自分自身が心身ともに満たされ、自分らしい生き方を実践している人は、自然と周囲に対しても寛容になり、ポジティブな影響を与えるようになります。
- インサイド・アウトの視点: 自分の内側(心身)を整えることが、結果として周囲の人々、地域社会、そして地球環境(SDGs)への配慮へと繋がっていくという考え方です。この「インサイド・アウト」の視点が、社会をよりよく変革・活性化していく鍵となります。
- 半自動的な世界変革: 私たちが自分自身の人生を楽しみ、輝かせようと努力するプロセスそのものが、より明るく活力のある社会を創り出すエネルギーになります。
多層的なウェルネスの視点
現代のウェルネス研究では、マズローの欲求5段階説(自己実現欲求への到達)や、スピリチュアルな充足感、地域コミュニティでの役割など、非常に多岐にわたる視点が盛り込まれています。
これらはすべて、「人間が人間らしく、尊厳を持って生きる」という一つの目標に向かっています。
さらにウェルネスを深めるためのおすすめ書籍
この記事で解説した「ウェルネスな生き方」を、より具体的に実践し、理論的に深めるための良書を厳選しました。
もしよろしければ、あなたの人生の旅の指針としてご活用ください。
ウェルネスを「科学的な生き方」として捉える

『Life is Wellness 「健康な生き方」の科学』(石村友見 著)
ニューヨークで活躍する著者が、単なる運動習慣にとどまらない「人生全体の質を高めるウェルネス」を提唱。この記事のテーマである「自分らしく輝く生き方」を、より具体的かつ情熱的にイメージさせてくれる一冊です。
~当サイトの書評記事で詳しく見る~
マズローの思想を原典で知る

『完全なる人間 [第2版] 魂のめざすもの』(A.H. マズロー 著)
記事で触れた「欠乏欲求」と「成長欲求」の違いを、マズロー本人が最も深く論じた名著です。自分自身の内側から湧き出る「もっと良くなりたい」という声の正体を知ることができます。
ウェルネスと幸福の優先順位を学ぶ

『精神科医が見つけた 3つの幸福』(樺沢紫苑 著)
幸福を「セロトニン」「オキシトシン」「ドーパミン」という3つの脳内物質から解説。健康(ヘルス)を土台にして、いかにウェルネスな人生を積み上げるかという戦略が、この記事のロジックと完璧に一致します。
本質的な「自律」の習慣を身につける

『完訳 7つの習慣 人格主義の回復』(スティーブン・R・コヴィー 著)
野崎康明氏の定義にある「自己責任」と、「ウェルネスの7つの次元」を統合したような世界的ベストセラー。主体性を持ち、自分らしい人生をデザインするための究極の実践書です。
身体的ウェルネスを科学的に整える

『最高の体調』(鈴木祐 著)
「なんとなく不調」な状態から抜け出し、ハイレベル・ウェルネスへ向かうための科学的アプローチ。現代の環境に適応し、人間本来の活力を呼び覚ます具体策が満載です。
知的・精神的ウェルネスを解放する

『ずっとやりたかったことをやりなさい』(ジュリア・キャメロン 著)
自分の内側に眠る創造性や好奇心を再発見するためのワークブック。日々の「気づき」を深め、自分らしく輝くプロセスを楽しむための最高のアドバイザーになってくれます。
まとめ あなたの「ウェルネス・デザイン」を始めよう
ウェルネスとは、決して完成されたゴールではありません。 それは、「健康という土台の上に、自分らしい豊かな人生という絵を描き続けていくプロセス」そのものです。
「病気ではないから大丈夫」で終わらせるのではなく、「もっと楽しく、もっと自分らしく生きるにはどうすればいいだろう?」と自分に問いかけてみてください。
- 今日食べるものを、少しだけ意識して選んでみる
- 寝る前に、今日あった「良かったこと」を一つ思い出してみる
- 自分が本当にやりたかったことに、少しだけ時間を割いてみる
そんな小さな積み重ねが、あなたのウェルネスを形作っていきます。
完璧を目指す必要はありません。
あなたが「今、この瞬間を活き活きと生きている」と感じられるなら、あなたはもう、素晴らしいウェルネスの旅路に立っています。
現代という自由な時代だからこそ、誰かの物差しではない、あなただけの「輝く人生」をデザインしていきませんか?
この記事の参考文献
- 公益社団法人 日本WHO協会(https://japan-who.or.jp/about/who-what/charter/)
- Global Wellness Institute(https://globalwellnessinstitute.org/what-is-wellness/)
- 厚生労働省 e-ヘルスネット(https://kennet.mhlw.go.jp/information/information/exercise)
- 東京成徳大学「特集シリーズ:“ウェルネス”豆知識①」(https://www.tsu.ac.jp/d-health-and-sport-psychology-news/20231212/)
- 一般社団法人日本ウェルネスゴルフ協会(https://jwga.org/whats-wellness/)
- 野崎康明著『ウエルネスの理論と実践』 Amazonで見る|楽天で見る
記事に関するご案内
こちらの記事は、2023年4月2日に執筆いたしました。
最終更新日は2026年1月2日です。
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