
『岸辺露伴は動かない』 ヘブンズ・ドアーが映し出す「見えないページ」
「リアリティこそが作品に命を吹き込む」
そう語る漫画家・岸辺露伴。
彼が体験する奇妙な出来事は、一見すると怪異を描いた物語です。
けれど観ているうちに、私の興味は怪異そのものではなく、それを見つめる露伴の眼差しへと向かっていきました。
露伴の能力、ヘブンズ・ドアー。
相手を本に変え、その人の記憶や人生を読み取ることができる、不思議な力です。
「ヘブンズ・ドアー! 今、心の扉は開かれる」
もし、自分の心も一冊の本になるとしたら。
そこには、どんなことが書かれているのでしょう。
自分では当たり前だと思っている考え方。
何度も繰り返してきた選択。
理由もなく避けていること。
大切にしていると思っていたもの。
ページをめくるたびに、自分でも知らなかった自分が現れてくるのかもしれません。
露伴は、目の前で起きる奇妙な出来事を、すぐに善悪で判断しません。
恐れながらも、まず観察する。
理解しようとする。
その姿を見ていると、見えているものよりも、「どう見ているのか」のほうが、その人の世界を形づくっているように思えてきます。
私たちは毎日、たくさんのものを見ています。
けれど、その中で本当に見えているものは、どれくらいあるのでしょう。
物語を観終えたあと、不思議と「怪異」が印象に残ったのではありませんでした。
人の心を読み解く露伴の眼差しでした。
もしヘブンズ・ドアーが、自分にも使えたなら。
私は最初に、誰のページを開くのでしょうか。
-- 『岸辺露伴は動かない』を観て