
『にんげんっていいな』|異界から眺める、体温という名の奇跡
夕焼けが山の向こうへ沈み、昼と夜の境目がゆっくりと溶け合っていきます。
その頃、物語を語り終えた生き物たちは、人間の暮らす里の灯りを、少し離れた場所から眺めています。
あたたかいごはん。
ほかほかのお風呂。
帰る場所があり、自分を呼ぶ声がある。
どれも特別な出来事ではありません。
けれど、「にんげんっていいな」が歌うのは、そんな何気ない暮らしでした。
「にんげんって、いいな」
その言葉を口にするのは、人間ではありません。
少し離れた場所から私たちを見つめる存在が、人間の暮らしの中に、小さな幸せを見つけています。
笑い合うこと。
転んで泣くこと。
誰かと食卓を囲むこと。
眠って、また朝を迎えること。
そんな当たり前の日々が、とても愛おしいものとして映っています。
私はこの歌を聴くたび、人間は自分で自分を評価しすぎているのかもしれないと思います。
何ができるか。
どれだけ認められるか。
どこまで正しく生きられるか。
そんなことばかりを気にしているうちに、生きていることそのものの温かさを忘れてしまうことがあります。
けれど、この歌は何も求めません。
ただ、人間っていいな、と歌うだけです。
その一言だけで、十分なのだと語りかけてくるようでした。
もし人間ではない誰かが、今の私たちを眺めているとしたら。
私たちが欠点だと思っているものさえ、「生きている」という美しさとして見えているのかもしれません。
歌が終わったあとも、その優しい眼差しだけが、静かに心に残り続けています。
-- 『にんげんっていいな』を聴いて